2016年 12月 03日
ATSと言う言葉は聞いたことがあると思いますが、ATSの歴史について簡単に振り返ってみたいと思います。 出来るだけ、判りやすい言葉で書かせていただこうと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。 現在はJR各社並びに中堅私鉄などでは保安装置の一環として使われるATSですが、日本工業規格JIS E3013(鉄道信号保安用語)によりますと、下記のように定義されています。 「自動列車停止装置」 列車が停止信号に接近すると,列車を自動的に停止させる装置。ATS (automatic train stop device) ともいう。 ATS前史 ATS自体は戦前からあり、銀座線で採用されていたような打子式(信号が赤の場合、バーが立ち上がり車両の非常ブレーキバーを操作するもので、非常ブレーキがかかると言う原始的な方式。 昭和16年には当時の鉄道省でリレーを使用した速度照査式のATSが開発されましたが、太平洋戦争が始まったこともあり設置は結局中止となってしまいました。 軌道電流方式のATSが採用されたのは、 都営地下鉄1号線(現在の浅草線)に相互乗り入れの京成押上線とともに採用されたのが最初だそうです。 国鉄に有ってはATS設置の機運となったのは昭和37年の三河島事故がその起因とされており、それ以前は国鉄にはATSすら設置されていませんでした。 ただ、東海道線などの列車本数が多かった区間ではATSのもととなった車内警報装置が設置されていました。 前置きが長くなりましたが、今回はATS-Sの前身である車内警報装置についてお話をさせていただこうと思います。 車内警報装置に関する話を昭和32年の国鉄線から抜粋したいと思います。 昭和32年に計画された車内警報装置は、3種類で、A型・B型・C型に分類されていました。 いずれも、警報を発するだけで、非常ブレーキの動作などを行うことは無く、運転士の注意を促すものでしかありませんでした。 以下、国鉄線から記事を参考に書かせていただきます。 A型・・・自動信号機用軌道回路の信号現示に応じた信号電流を流すもので、将来車内信号表示や自動列車制御装置などを作る際に手戻りなく移行させることが出来るそうで、重要幹線(東京~姫路間)で採用、速度もブレーキ距離も異なる列車が混在すため、警報発信後も赤ランプなどを点灯すると言った方式を考えており結果的には導入されなかったようです。・・・1970年までにATS-Sに移行されています。 B型・・・山手、京浜東北線の昭和28年頃から採用されている方式で、昭和32年度中には、中央線、総武線の電車にも取付けられる予定となっているそうで、自動信号機が赤の場合に流れる電流値が異なることを利用して、警報を発すると同時に車内警報ランプを白色灯から赤色灯に変えるそう、乗務員がこれを確認して押ボタンを押すと、警報が止み白色灯となる。というものです。 当然のことながら自動停止機能はありません。 C型は非自動信号区間(腕木式信号機&タブレットを使用する線区)にも取付けられるので、急行、準急等の高速度列車が運転される区間でA型、B型が取付けられない線区に設けられるもので、誘導電流の応仕組みを応用したものでした。 下図を参照 腕木式信号機が進行の場合は、車上子の回路が出来ていますので誘導電流が発生する、逆に停止現示の場合は誘導電流は発生しないのでリレーが作用してベルが鳴動するようです。 なお、車内警報装置は、昭和34年5月までには下記の線区で整備されたそうです。 A形(東京~大阪556.4km) B形(南武線・阪和線・城東線・西成線・片町線) C形(裏縦貫(日本海縦貫)線で設置、南部線を除くB形は使用、その他は試用を開始 昭和33年3月17日には、西成線(後の桜島線)及び片町線で試験が行われたそうです。 ただし、こうした車内警報装置はあくまでも、警報を発するだけであり、確認操作後ブレーキ操作をしなければ衝突する事故を起こしかねず、実際昭和35年1月1日は、準急「はまな」号が東京駅構内で停車中の横須賀線電車に追突して、重軽傷者23人を出す事故を起こしています。 この時は幸い死傷者が無かったのですが、さらに2年後の昭和37年には三河島事故を起こして死者160人、負傷者296人を出す大惨事となり、この事故をきっかけにATSの本格的導入が検討されることとなりましたが、この時も車内警報装置に自動停止機能を加えたものであり、ATSとしては不十分なものでありその後も何度か追突事故などを起こしていました。 運輸省制定のATSの話はまた別の機会にさせていただきます。 なお、ATSに関するさらに詳細なお話などは、後日もう少し調べてからアップさせていただきます。m(__)m にほんブログ村 にほんブログ村 ******************************************************** 取材・記事の執筆等、お問い合わせはお気軽に blackcat.kat@gmail.comにメール またはメッセージ、コメントにて お待ちしております。 国鉄があった時代 JNR-era ********************************************************
by blackcat_kat
| 2016-12-03 09:11
| 線路
|
アバウト
カレンダー
カテゴリ
以前の記事
2023年 10月 2023年 07月 2023年 04月 2023年 02月 2022年 12月 2022年 10月 2022年 03月 2021年 12月 2021年 11月 2021年 10月 2021年 07月 2021年 05月 2021年 02月 2021年 01月 2020年 11月 2020年 04月 2020年 01月 2019年 11月 2019年 10月 2019年 09月 2019年 07月 2019年 06月 2019年 05月 2019年 03月 2019年 02月 2018年 12月 2018年 10月 2018年 06月 2018年 05月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 10月 2016年 06月 フォロー中のブログ
最新のコメント
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||